Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「あはは!」と心音はクッションを避けながら楽しそうに笑った。


確かに、高校生になってもとろけるようなラブロマンスに憧れてた。


それに…


「英文科のOliver(オリバー)先生覚えてる?」


「あ~…あのメガネの冴えない感じの?」


「冴えなくないじゃない」


「もしかして、オリバーが好きだったの?それでハイスクールに留まってたわけ?」


「い、いいじゃない!」


思わず頬が赤くなって両手で顔を覆う。


オリバー先生の喋り方や声やまなざしはとっても優しく、かと言って生徒とフレンドリーに接するわけでもなく、彼の授業はつまらないとよく生徒たちから噂されていた。


でも、授業は淡々としたものではなかったし、時折とてもロマンスを交えての説明に心がときめいた。


あの時のあたしはオリバー先生に告白する勇気なんてとてもじゃないが無く、敷地内ですれ違ったとき、授業のときに眺めるのが精一杯だった。


「あたしはアメフトのLucas(ルーカス)がイケてて好きだったな~」


心音は顎に指を置き、思い出すように目を上げる。


「ルーカス、狙ってた子多かったよね」


「そ、でもあたしがアタックしたら以外と簡単に落ちたワ」


「まぁ心音はもてたから」


くすくす笑いながら


「と言うことは、あたしたちがハイスクールに留まってた理由て男の為ってこと?」心音も笑い、でもちょっとその口角を緩めると





「でも、ホントの所はあんたと一緒に居たかったから、ってとこかな。


小学校や中学校のときってさ、里親ん所がサイテーで帰りたくなくて、あんたんちに遊びに行って、あたし凄く楽しかった」






心音―――…


あたしもよ。あたしもきっと心音と一緒にいたかった。