人間は日々変わっていく。環境に応じて、歳を重ねて―――
「……」
あたしは無言でグラスに口を付けた。
隣で心音が「ふぅ」と小さくため息をつき「ごめん、変なこと言って」と脚を組みなおす。
「ううん。……あたしは…ここに来るとき色んなものを失って、色んなことを置き去りにして、感情も捨てた。
そのときに啓と出逢ったの。
当然上司と部下って言う関係だから、敬語で…だから喋り方が抜けないのはそのせい。しかも人間てそう簡単に変われないし。
最初は……そうね、ちょっと彼が鬱陶しかった。だから彼の望むような関係を提供したらちょっと大人しくなるかと思った部分もある。まぁ麻野さんとの賭けに勝たせてあげたのもそうゆう部分が少しあったと思うわ」
心音はちょっと苦笑して、あたしのグラスに再びカチンと合わせ
「あたしたち―――変わっちゃったね」
と天井を仰ぎながら小さく言った。
「そりゃ変わるわよ。もう24よ?」とわざと明るく言うと
「あたしたちElementary School(小学校)からSenior High School(高校)までずっと一緒だったね」と心音は楽しそうに笑う。「授業はつまらなかったけど」と付け加え、それに賛同する意味で笑いながら頷いた。
あたしたちにとって履修した科目は今更、と言った感じで低レベルに感じた。一生懸命勉強している人には失礼だったけれど。この時点で二人とも飛び級して卒業することも可能だったけれど、そうしなかったのは…
「心音は寝てばかり」
「瑠華は真面目にノート取ってたけど」
「それを目撃した心音が、あたしのノートを取りあげて」
「そうそ!」心音は手を叩いて身を乗り出し「てっきり、先生の説明を書いてるかと思いきや、ノートに書かれてたのは」
言いかけて
「その後のこと言うのはやめて」とあたしは片手で手を覆い、もう片方の手を心音に向けた。
でも心音はやめなかった。
「小説?て言うの?それも甘っあまのラブロマンス♪ハーレクインもびっくりするぐらいのね」
「だから、やめて!って言ったのに!」
あたしは近くにあったクッションでボフっと心音を叩くふり。



