Fahrenheit -華氏- Ⅱ



その数分後、


「やった!やりましたよ!三件目!」


佐々木が電話を切ったあとガッツポーズで勢いよく立ち上がり、


「佐々木さん、素晴らしいです」と瑠華は無表情で手をパチパチ。素晴らしいと思ってンのかな…とちょっと思ったが、佐々木はこれを瑠華の通常だと言うことを俺よりも知ってるみたいで


「柏木さんのアドバイスのおかげですぅ」と言って瑠華に笑いかけている。


アドバイス?


どうアドバイスしたのか気になる所だが


瑠華の分と合わせてこれで8件か…


嬉しいことだが、忙しくなりそうだ、と俺は苦笑。


その後、瑠華は定時に帰って行き、その30分後、佐々木も帰っていった。


二人がテレアポでアポを取ってくれたからな、データ作りでもすっか。


と言う意味でPCに向かうが、なぁんか、集中できない。


いつも居るひと(瑠華)が居ないだけで集中力が半減だ。


目も痛くなってきた。


諦めよう。


そう決断したのは二人が帰っていって一時間半のこと。


帰り支度をしてエレベーターを待っていると


ちょうど9階からエレベーターが降りてくるところで


「ラッキ♪」


と思って居たが


ガー…


と言う機械音を鳴らして扉が開いた瞬間、何故か俺は後ずさりしたくなった。


瑞野さん―――……


が、こちらもちょっと驚いたように目をまばたき


「お疲れ様です。あの……これからお帰りですか?」と俺の格好を見て聞いてきた。


車移動だからトレンチコートは着ていない。それでもビジネスバッグは持っている。


「あー……暇だから綾子と裕二誘って、久しぶりに飲みに行こうかなって…」


半分嘘で半分本当のことだ。


でも


「木下リーダ―は本日会長の会食のお供をしていらっしゃいます」との答えに


「そーなの?」


俺は素で聞いた。


そー言えば、裕二も心音ちゃんとの話がうまくまとまったのか、新ソフトのプログラミングに忙しい、とか。


桐島は……ダメだ。サシであいつと飲んだらこっちが疲れそう。


ガクリと肩を落としていると


「あ、あのっ……!あたしが」


瑞野さんが口火を切った。