Fahrenheit -華氏- Ⅱ


その後、瑠華は何事もなかったかのように、淡々とそれでいて涼し気に仕事をこなしていた。


俺は…瑠華と陰険村木が何を話してたのか気になり過ぎて…


隣のブースを意味もなく覗いたり。陰険村木は相変わらず眉間に皺を寄せ不健康そうな顔で書類と睨めっこしていた。


いかん、これじゃ仕事にならない。


二人が何を話したのか―――気になるところだが、あの二人はまさに『混ぜるな危険』だ。


「ふっふっふ。薩長同盟破れたり!」


意味も無くガッツポーズをして言うと、瑠華が目だけを上げて


「部長、仕事してください」


あ、やっぱそう言うのネ。


早々に諦めた俺は外回りをすることに決めた。幸いにしても菅井さんを併せて三件アポが入っている。


いそいそと出かけ、トラブルを抱えている二件はそれ程問題視することもなく、あっさりと終わった。


残り一件、セントラル紡績の菅井さんだけだ。


一昨日、飲みに行った関係なのに妙なきんちょー。


けれど菅井さんは


「神流さん」と俺の顔を見て破顔。


とりあえずは、ほっ。


菅井さんとは二日前にプライベート用の連絡先を交換し合って、それからちょっとしたやりたとりをした仲だと言うのに


本人を目の前にするとやっぱりきんちょー。


何せ俺が真咲の昔のオトコだと言うこと、今は瑠華と付き合ってると言うことを暴露して、しかも酒のせいもあって赤裸々に俺の瑠華への気持ちを熱すぎる程、語っちまったからな。


俺はネクタイを締め直し


「突然のご訪問お許しください」とビジネス口調で言うと


ふふっと菅井さんが小さく失笑。


わ゛~~~!(泣)やっぱ言うんじゃなかった!