Fahrenheit -華氏- Ⅱ



入ってきたのは桐島で


「あ、お疲れ~」と桐島は相変わらずのんびりとした物言いで手をあげ


「おう」俺も短く挨拶。佐々木は「お疲れ様です」と頭を下げていた。


「二人ともランチ?相変わらず仲良しだね」と桐島に聞かれ


だ・れ・が!佐々木と仲良しなんだよ!


まぁ俺はそれなりに佐々木を可愛がってるところはあるが。いつもセットみたいな言い方やめてくれ。


「小杉飯店に行くとこ。お前もランチ?」と桐島に聞くと


「うん、俺も。小杉飯店て割と近くにあるけど行ったことないなー、気になるし俺も行こっかな」


と便乗してくる。


ぇえ~面倒くさいなー…


と思いつつも…数少ない同期だし、俺は何だかんだ桐島のこと嫌いじゃないし。


何だかんだで、変な組み合わせだが近くの中華料理屋に行くことになった。


――――

――


「へぇ、味があっていいね」


馴染みの中華料理屋の外観を眺めて桐島がしげしげ。


味がある??俺にはただ古くて汚い店にしか見えないが。


「あ、でも!こうゆうお店って意外に美味しいんですよね」と佐々木がわくわくと目を輝かせる。


店の外観と同様、店員の接客も雑なもので、それでも男三人だと意外と気にならないもんだな。


俺は四川麻婆定食。麻婆豆腐に白飯とトマトと卵の中華炒めが少々、サラダと中華スープがついてくる。


佐々木は天津飯。


桐島はジャージャー麺定食。水餃子と野菜の中華スープがついている。


因みに俺が頼んだのは四川料理、佐々木は広東料理、桐島は北京料理ってとこか。


料理が届いて、すぐ俺と佐々木は箸を割ったが、桐島だけはスマホであちこちの角度から写真を撮っている。


俺も佐々木も思わず目をぱちぱち。


桐島が熱心に写真を撮ってる最中、俺は桐島を無視して麻婆豆腐を蓮華ですくった。


「お前何やってンの?もしかしてSNS映えとか狙ってんの?」


イマドキの女子か!と突っ込みたくなったが、桐島は


「や、今度の新メニューの参考にしようかと」と相変わらずのほほんとした笑顔を浮かべ写真を確認している。何だ、こんな所にきてまで仕事かよ。


桐島は写真を撮り収めたことに満足したのか、ようやく箸を手にしてジャージャー麺の肉味噌を一口。


「これはっ!」


目を開いてジャージャー麺を睨む桐島。


な、何!?


毒でも入ってンのか!


「結構おいしい」


あっそ、思わせぶりな態度とりやがって。


桐島め、相変わらずペースが分からんヤツだな。