Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「柏木さん…何か怒ってます?」


とエレベーターを待っている最中、佐々木が探る様に目を上げて


「何でそう思うんだ?」


と逆に聞いてみた。


「……何となく…です」


つまり瑠華の怒りは佐々木にまで分かったってことだよな。でも、まぁ佐々木も確信しているわけじゃなさそうだが。


エレベーターが来て二人乗り込み


「部長、どこでお昼ごはんするんですか?」と佐々木はさっきの不安顔から一転、ちょっとわくわくしたような視線を向けてくる。


「んー、小杉飯店とかにしようかな~」


“小杉飯店”と言うのは古くさくて、お世辞にもキレイとは言い難い中華料理屋だったが、これが安価で結構うまかったり。割と本場の味を再現しているが、日本人が食べやすいように微妙にアレンジもしてある。


「僕、行ったことないです。一緒に行ってもいいですか?」と聞かれ


「いいケド、今日は奢りじゃねぇぞ」


「分かってますよぉ。て言うか僕がいつも部長にたかってるみたいな言い方やめてください」


と佐々木は口を尖らせる。


そんなやりとりしていると、途中の階で扉が開いた。