Fahrenheit -華氏- Ⅱ



何故怒ってるかって?


そんなん数か月一緒に仕事をして、プライベートを共にしていたから分かる。


怒りの矛先が仕事に向けられたってワケだ。


やっぱ村木に怒ってんだろうなー…


とか思ってたけど、書類の最後の1ページに


アメリカのこれまた有名な大型家具店の名前が記載されていて、その取引先に「セントラル紡績」だけが記載されていた。


思わず顔を上げると


「これは部長が“直接”セントラル紡績さんに持って行ってください」


瑠華は書類を手渡しながらうっすら微笑んでいて。


瑠華―――…


瑠華の炎のように燃えたぎる“怒り”の中で、やっぱり温かい何かはあって。


「うん、ありがと。必ず届けて提案する」と俺も微笑を返すと、瑠華は微笑みを浮かべたままデスクに戻っていった。


そんなことをしているうちにあっという間に昼の休憩時間になって、


「休憩とってきなよ」二人に言うと、瑠華は


「私はまだやることがあるので」とPCのモニターを見つめて、キーボードを操っている。「部長と佐々木さん、お先にどうぞ」と言われ


それ以上強要できず。


てかそれ以上今は言えない。


菅井さんに書類を届けるよう言ってくれたが、それ以外いつ発火するか分からないからな!


「じゃ、俺ら先に行くか」と俺は佐々木を目配せ。


佐々木も瑠華の仕事に対しての闘志に追いつかないのか、素直に


「じゃ、じゃぁお先に休憩失礼します」と小さく頭を下げた。


「行ってらっしゃい」と言った瑠華の視線は相変わらずPCから離れない。


こうなったら何が何でも瑠華の意思を覆せないと知ってる俺は(たぶん佐々木も)いそいそとブースを出ることになった。