Fahrenheit -華氏- Ⅱ


それでも瑠華はいくつか(きっと)アメリカの企業との電話をしていて、ひたすらPCに向かい合っている。


通常なら瑠華と佐々木が休憩に入る30分程前


「部長」


ふいに呼ばれ


「は、はいっ!」


俺は条件反射で思わず手を挙げた。


しかし瑠華は気にしてないのか、或は慣れてる??


「部長の午後の予定はどうなっていますか?」


と、真顔で聞かれて、俺は頭の中にあるスケジュールを思い浮かべた。


「えーっと…二件、アポがあるかな。二件ともちょっとトラブルがあって長引きそうだけど、5時には帰る予定」


本当のことだ。


「そうですか」瑠華は短く頷き、書類の束をずいと寄越してきた。


渡された書類を見ると、やはりアメリカの企業と…セリ?の内容が記載されていて、その横にはいくつか日本の企業が並べられていた。日本の企業はどれも一度は名を聞いたことのある有名企業ばかりだ。


「これが?」と言う意味で目を上げると


「来年の三月までに開催されるオークションです。オークション元は全てアメリカで、内容も統一されていませんが、内容に寄っていくつか興味を抱かれる企業を選びました」


瑠華は日本の企業名が記載されている場所を細くてきれいな指でトントン。その爪には淡いベージュ色がきれいに乗っていた。左手薬指にストーンが一つ。右手薬指には……


俺とお揃いのティファニーのリング。


無意識に俺はワイシャツの上から、チェーンにぶら下がっているリングを確かめるように触った。


「聞いていらっしゃるのですか」


と、鋭すぎる突っ込みが入り、


「はい!聞いてます」みっともなく声が裏返っちまったぜ。


「オークションの規模は大小様々で、規模によってマージンのパーセンテージを変えています。


いくつか日本の企業…海外に支社を持つ企業にに提案して、色よいお返事をいただいたのなら、私がオークションの橋渡し…所謂バンニング(代行)を行います。引き合い(早い話、談合)になりますが、お互い悪い話ではないか、と」


なるほど。


それで今朝からずっと電話してたんだな…