「ええ、独り暮らしですが。それが何か?」
「ご両親は何も言わなかったのですか?あなたが家を出るとき」村木が更に聞き
「言うも何も、私は日本での仕事が決まっていたし、両親はアメリカでの仕事があるので」
「そうなんですか?アメリカ…」村木は意外そうに目をまばたき、しかしその視線をすぐに険しくさせた。
「失礼ながら、ご両親はあなたを日本で独り暮らしをされること心配しなかったのですか」
「父の古くからの友人が東京に居るので、心配はそこまで」
古くからの友人って言うのは俺の親父のことだよな。まぁ親父はプライベートでも瑠華と会ってるみたいだし。(※Fahrenheit参照)親しみを込めて『おじ様』とか言われると、歯軋りしたくなる程だが。
「そうですか」村木はまたも声をすぼめてコーヒーをすする。
「あの、私の独り暮らしが何の情報になると言うのでしょうか。世間話をするような仲ではないので、用件を早めに仰ってください。私たちも暇ではないので」
相変わらずキレッキレの言葉で瑠華が淡々と言い
「それはさっき言いました…一言お詫びを…と」
「謝罪は一度で充分です」と瑠華がまたもピシャリと言う。
瑠華のペースは、俺は慣れてるけど村木はちょっとついていけないようで、瑠華に向けていた視線を俺の方に移す村木。その視線に助けを求められているような気がした。
はじめてだぜ、こんなこと。



