Fahrenheit -華氏- Ⅱ


別に、瑠華はやましいことをしていないから堂々としてればいい、とは言うけれど、いや、実際そうなんだけど、でもやっぱ“ここ”では隠しておきたい。


あれこれ下衆な想像や噂をされるのもまっぴらゴメンだ。


駐車場のすぐそこの曲がり角を曲がったら、会社だ。瑠華が曲がり角を曲がって姿が見えなくなって5分が経ち、


これならいいか、と言う思いで俺も車から降りた。


瑠華はもう正面入り口から中に入ったかと思いきや、白い建物の出入り口の前、横を向きながら立っていた。


そのすぐ横には男―――瑠華はその男と何やら話している様子。


んん!?


目を凝らしてその姿を見ると、


んゲ!!!


陰険村木じゃねぇか!


思わずUターンしたくなったが、昨日あんなことがあったんだ、瑠華にまた攻撃的なことを言うかもしれない、と思いで俺はやっぱりUターンをやめて、大股でその場所まで歩いていった。


「―――……すぐそこです。会社の裏手の…」と村木の声が聞こえてきて


俺が近づくと、村木は目をまばたいた。


「神流部長、あなたも随分お早いですね」


と陰険村木は目を細め、そして瑠華の顔を見比べ「ああ、なるほど…」と、一言。


おい!村木ぃ!何を想像したんだ!何を納得したんだ!


と、怒鳴りたいのを堪え、拳をふるふる震わせていると


「ちょうど良かった。神流部長も一緒にどうですか?この近くにうまいコーヒーが飲める喫茶店があるんです。……話したいこともあったし」


と、村木は淡々と言う。


「はぁ…」俺は間抜けに答えた。


てか話って何。ここじゃ話せないこと?


朝から面倒くせー!


今日は一日いい日になる予定だったのにっ。