Fahrenheit -華氏- Ⅱ


瑠華と入れ替わりにシャワーを浴び、その間瑠華はリビングで化粧に勤しんでいたみたいだが、俺が出てくると殆ど会社仕様になってて


「てか早いね」


「慣れたものです」瑠華はあっさり。


まぁすっぴんとほぼ変わんないから早く済むんだろうなー


瑠華は最後の口紅をぬろうとしていたところで、


「あ、待って、待って!」


俺は手を広げて制止。ソファに座った瑠華が怪訝そうに目を上げ、俺はまだ口紅がのっていない瑠華の唇にそっとキス。


瑠華は突然のキスに驚いたのだろう、唇を離しても目を開いたままだった。


だって口紅したら取れるかもしれないだろ?


瑠華はちょっと笑って、それでもすぐに淡いピンクの口紅を唇にひく。


あーあ、これじゃもうキスできないじゃん。


とイジイジしつつも、うるうるグロスがのった唇もまた、イイ。


つまり何をやってもトキメいちゃんだな、俺って…


その後、俺たちは新聞を読み


「啓、読み終わったらそちらを貸してください」


「うん、俺もこっち終わったから交換」


瑠華が淹れてくれたコーヒーを飲みながら地元新聞と経済新聞を取り替えっこするのも何だか新鮮(色気ないけどな)だし、


今日も一日いい日になりそうだ!


―――

―――――


俺たちはいつもより一時間早く会社に到着した。時刻は朝の6:30。


俺が停めている従業員駐車場にはまだ一台も停まっていなかったけれど、それでも充分に注意を払って


「よし!瑠華!今なら大丈夫だ!俺も後から追いかける」


時間差出勤攻撃だ!


「啓……映画の嗜好が変わりました?スパイみたいですよ」


瑠華の無表情ジョークを見送り、俺はシートにもたれて


ふぅ~


と、ため息。