「てか、何で“こっそり”なんだよ。普通に持ってこればいいじゃん」と思わず苦笑いを浮かべると
「だって…」と瑠華は口ごもって俯いた。
「だって?」
「啓は何かこういうこと重いとか……思いそうで…何と言うか自分の空間に女の生活を入れたくないと思ってるとか…色々考えちゃったんです」
ま、まぁ??今まで俺が女を部屋に入れたくなかったのは彼女面されるのがイヤだったから半分当たってるっちゃ当たってるが。
でも
瑠華は他の女とは違う。
瑠華だけは特別だ。
「俺は嬉しいけどな~、瑠華のワードローブが俺の部屋にあって、瑠華の使ってるシャンプーがバスルームにあって♪」
俺は全体的に白い色に少しフリルのあしらってあるブラとパンツを手にして、まじまじと見ていると、瑠華はサッとそれを取りあげ、ちょっと目を吊り上げる。
はい、すみません!
俺は慌てて顔を逸らした。
「じゃぁさ、じゃぁさ!俺のシャンプーとかも瑠華のマンションに置いていい?」
さりげなく目を上げてねだるような口調で言うと
「いいですよ」
と、あっさり答えが返ってきて、びっくりしたのもあったけれど正直拍子抜けもした。
遠かった距離が一気に縮んだ気がして
「もういっそ、け……」
結婚しちゃう?
なんて軽い調子で言いかけた言葉に
「こう言うのがいいです。
ゆっくり進んでいく感じが。
前は、ただ一緒に居たい一心で―――急ぎ過ぎたのが
いけなかったのです」
『結婚しよう』と軽々しく口にしなくて良かった。俺は口元を手で覆った。
近くなった距離が、また遠のいた瞬間。
けれど瑠華は
「大切にしたいのです。この気持ちを。
ゆっくりと温めていく感じが」
目を伏せて微笑する瑠華は、やっぱりきれいで―――
それと同時に『大切にしたい』と言ってくれた言葉に、またも距離が近づいた気がした。
「今度、お互いのシャンプーとか歯ブラシとか、買いに行こうな」
俺が提案すると、瑠華は微かに笑ってこくりと頷いた。



