Fahrenheit -華氏- Ⅱ


それでも瑠華は全然嫌そうではなく、ちょっと苦笑を浮かべながら


「でもあたし、男の人はこれぐらいガサツな方が好きです」


と言って床に散らばった衣服を一枚一枚拾い上げる。


ガサツ、と言われてちょっとショック……だけど、いいもんねー。瑠華ちゃんがここに居てくれるなら。しかも「好き」って言ってくれたしぃ。


ところで…


「今日、心音ちゃんは大丈夫なの?裕二と一緒だけど、その後一人だし…」


さっき電話で揉めてたっぽいし。


「大丈夫です。麻野さんとはとても“健全なビジネス”で終わったようです」


瑠華の報告に胸をほっと撫で下ろしたのも束の間…


「麻野さんと別れた後、六本木のクラブで逆ナンパした男性と朝までフルコースですので」


ナンパした相手と朝までコースかぁ。懐かしいな、俺も昔はよくやった…


って


「ちょちょちょちょちょちょっっ!」


俺の慌てぶりに瑠華が目をぱちぱち。


「大丈夫なの!?だって心音ちゃん日本に不慣れなんでしょ!?ここはニューヨークと違うし」


「ニューヨークより安全なことは間違いないです。それに何かあったときのようにしっかり保険を掛けてきましたから」


と言って瑠華はケータイを開いて画面を俺に見せてくる。


その画面に写っていたのは、「Alex Carter?」と俺は名前を読み上げ、て言うか知人でも有名人でもないぞ?心音ちゃんが送ってきた画像ってのは、どうやらパスポートの写しのようで、顔写真も載っていたが、金髪のこれまたイケメンな白人男だった。


「てかさっき会ったばかりの…ほとんど見知らぬ女に良くパスポートを掲示する気になったよなアレックスも」と俺は心音ちゃんのワンナイトラブの相手アレックスに感心。


「まさか。これはきっとアレックスが席を外したとき、彼の鞄から抜き取ったものでしょう。日本もそれほど安全な国じゃありませんね」


は!?


「それって……犯罪じゃないの!?」


あわあわと口元に手をやっていると


「別に窃盗したわけじゃありません。法に触れるようなことはないでしょう」


と瑠華はあっさり。


ま、まぁ?そうかもしれないけど。


俺は激しくアレックスに同情。アレックス……悪いことは言わないからこの女はやめとけ?