Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「ま、まぁ?とりあえず闇雲に反対しても余計こじらせるだけだから、ちょっと様子見って感じでどうですか?」


と何故か俺が間に割って入る。本来なら村木の援護射撃なんてぜってぇしたくないけどな。


でも、瑠華の過去が露見するよりはマシだ。


何せこいつに知られて良いことなんて何一つないからなっ!


「様子見ですか…それなら……」と村木が『百歩譲って』と言いたげに会話を締めくくらせようとした、そのときだった。


~♪


瑠華のケータイからムーンリバーが流れてきて、


「すみません、電源切り忘れていたみたいで……心音から」と最後の方は俺にだけ分かる声でこっそり囁いてきて、


瑠華はその場で受話口を押さえながら


「Hey,今取込み中で……What!?」と何やら瑠華の方が“取込み中”


「すみません、ちょっと出てきてもいいですか?」


「どーぞ、どーぞ」


俺はいそいそと奥のトイレの方を手で差し示した。正直瑠華と村木を同じ空間に置くと危険だと察していたところだ。


まさに『混ぜるなキケン』状態だな。


そりゃ瑠華の言ってることは正論だし、彼女自身が体験してきたことだから実もある。闇雲に喧嘩を売ってるわけじゃない。


とは分かるが、これ以上村木に余計なことを知られたくない。


瑠華はそんな俺の態度に不信感を抱かなかったのか、いそいそとトイレの方へ向かって行った。


瑠華がトイレに行くのを見届け、


「はぁ~」俺は盛大にため息を吐いた。


何で……なんで?勤務外なのにこんな苦労しなきゃいけないの……


って、まぁ俺が勝手に勘違いしちまって村木を尾行したのが一番の間違いだろうが。でも……何で俺、ライバル(?)の悩み相談なんてしちゃってるの?


「うちのトラブルをあなたがたに押し付けて申し訳ない、と思ってはいます」


と村木に言われて俺は目をまばたいた。


は――――…?