お代わりのグラスがそれぞれ届いて、村木は切り出した。
「私は学歴も大したものではなく、妻とは大学時代からの付き合いでしたが、天下の神流グループに必死になって入社したものの、最初は出世とは程遠く……雑用しかこなせなくて
家内に随分苦労を掛けました。
毎朝誰よりも早く出社して、誰よりも遅く会社に留まり、上司たちのサポートをそれこそ駆けずり回るようにこなしていた。休みなんてそれこそ無く、接待ゴルフと言われればついていき、役員たちの荷物持ちから会食の手配、送迎……何でもやりました。
そのときです、瓜生常務に目を掛けてもらったのは。彼は当時―――物流本部の部長でして、そこから親しくさせてもらいました」
はー……なるほど……だから瓜生常務に呼び出されたときも、昔の恩を忘れていなかったから了承したんか……
陰険なくせに義理堅いところはあるんだな。と俺は妙な所で感心。
「娘には……私の家内のようになってほしくなかった。
家内はつつましい女で、いくら夜遅くなろうが必ず私の帰りを待っていてくれましたし、いくら朝早かろうが必ず手の込んだ弁当をこしらえてくれました。
文句一つ言わず『家のことは私に任せて。あなたは仕事頑張ってください』と」
村木は―――初めて見せるどこか穏やかな表情でグラスに入ったブランデーをゆらゆら揺らした。
てか今気づいたけど、これってノロケられてる??



