Fahrenheit -華氏- Ⅱ



「最初から思ってたのですが、何故あなたがたはお二人であの場所に?」


瑠華が俺の手を握っていることに絶対気づいている筈なのに、村木はわざとらしく目を細めて聞いてくる。


「いや……その……!」


しまった!言い訳を用意してなかった!


と、ここに来て急にあたふた。


さっきまで派閥抗争のあれやこれを話してたからそこまで気が回らなかったって言うか……いっぱいいっぱいだったしな…


俺が一人で焦っているのに瑠華の手は離れていこうとはせず。


「はっきり仰られたらどうです?私たちの関係がどんなものか」


と、瑠華の方は言い訳することを最初から考えていなかったのだろう。


挑発的に村木を見据え、その妙に堂々とした瑠華の態度に村木の方が逆に怯んだようだ。


ごほん


村木はわざとらしく一つ咳払いをして


「つまりその……あなた方は


交際されている―――と」


『交際』とか……イマドキ言わねーよ。と思いつつ、それを全力で否定したかった俺。


だって村木だぜ!?俺にとっちゃある意味一番知られたくないヤツだ。


絶対それを弱みにあれやこれや陰湿なことを仕掛けてくるかもしれない。それこそ瑠華が会社で苛められる可能性がある。


だけど


必死に言い訳を考えている俺の思考をスルーして


「だったらどうすると仰るのですか」


と、これまた喧嘩腰……のように聞こえるが声のトーンは落ち着いてたし、喧嘩を売ってるようには見えなかったが瑠華は妙にこざっぱりと言い切った。


「どうもこうも……私は何もしませんし、そもそも何かする権利なんてない。


だが…」


村木は言いかけて俺を通り越して瑠華を見据えると


「娘に何か言われてそう芝居を打っているのだとしたら、それは許すことができませんがね」


とロックグラスを傾けて言い放った。


これには俺の方がカチン。


「だ・れ・が!!人の恋愛にかまけてる余裕があるって言うんだよ。


俺ぁ自分のことで精一杯だ。


俺が付き合ってる人は彼女だ」


必死に取り繕うとしていたあれこれ言い訳が一気に吹き飛んだ。微塵もなく粉々に砕け散って目の前から消え失せたのだ。


言った後になって、はっ!となった。


ヤベ……








やっちゃったーーーー!!?