Fahrenheit -華氏- Ⅱ



最初、村木が嘘を着いているのだと思った。


だから切り札として取っておいたカードを見せる羽目になったわけだが。


「ちょっと前、緑川派の鴨志田監査役と、神流派の瓜生常務、そして村木部長と二村が銀座の料亭に入って行ったと言う情報がありましてネ」


ネタはあがってるんだぜ。吐きやがれ!


と言う意味で厭味ったらしく言ってやると


「ああ、確かに行きました」とホシはあっさりとゲロした(白状した)


え?認めちゃう!?


と、こっちが問い詰めたのに、あまりのあっさりさに思わず怯んじまった。


「と言うかただの懇親会です。瓜生常務は私が入社したてのときの上司でありましたからね、何かと可愛がってくださったので」


「懇親会?だったら何で二村を連れていくンすか?


それに鴨志田監査役も一緒だったし。彼は緑川派の筆頭だ」


と、間を開けずさらに突っ込むと


村木はさも鬱陶しそうに顔の前で手を振り


「もうとっくの昔に代替わりしてる筈ですが?今現在、緑川派の筆頭は……確か神奈川支店の支店長だった筈。


そもそも監査役に何の力もない。派閥争いには何の影響も及ぼしませんよ」


あっさり言われ


まぁ鴨志田監査役にその力が無いのは分かってたことだけど。


でも代替わり?神奈川支店の支店長??


それは知らなかった。


「彼は……鴨志田監査役はほとんど楽隠居状態で、監査役と瓜生常務は昔仲が良かったようです……確か同期とか言っていたような。


それが何の因果か派閥争いに巻き込まれて、取り込まれて都合の良いように使われていただけですよ、監査役は。


こないだの懇親会でそれはそれはグチグチ長々と愚痴っておられました。


『望んで緑川派に入ったわけではない』とか『利用された』とかブツブツ。聞いてるだけで疲れましたよ」


「あんたそれを信じたわけ?」


それでも疑いを払拭できない俺はもう素全開で思わず突っ込むと、村木は特に不快に思ったワケでもなさそうで、てか娘の婚約者(?)のことでそれどころじゃないのか気にならなかった様子。


「信じるも何も、例え鴨志田監査役が神流派を呑み込もうとしているのなら、その猿芝居は必要ですか?むしろ神流派に寝返りたい、と訴えているようにも聞こえますが」


ま、まぁそうだよな……