通常の仕事をしながら、村木を監視することは結構疲れる。
夕方になるとげっそりとやつれていた。
佐々木に「部長大丈夫ですか?顔色が悪いですけど」と指摘されるぐらいだ。
それでも村木の動向が気になって仕方ない俺は、佐々木の心配に「大丈夫だ」と答えて監視を続けた。
村木は定時に近づいてくるとやたらと腕時計を気にしている様子。
やっぱ今日何かあるんだ。
と、予想が確信に変わった。
村木が定時を気にしてる、と言うことはヤツが動くのは早い段階だ。
俺は佐々木に「今日(勝手に)No残業デーだから、二人とも定時上がりね」と上司である権限を振りかざしまくって、手を振る。
佐々木は単に早く帰れるのが嬉しいのか「ヤッタ!」と言う具合にウキウキしていたが、瑠華の方は無表情に一礼。
「でもNo残業デーなんて珍しいですね。部長何か予定あるんですかね、“これ”と」と小指を立てて瑠華にこそっ。
おい!!俺をそんなオトコだと思うな!!
まぁ女と行動を共にするわけだからあながち外れてはいないけど!
と、俺は怒りMAX。
けれど
「さあ、私には興味がありません。
部長がそう仰るなら従いましょう。それも業務命令です」
と、その熱い怒りさえ瞬間凍結させる程冷たい瑠華。
「ホントに興味が無さそうですね」
と、佐々木はどこか安心したように、けれどちょっと苦笑いで認めてるし。
いいもんね……この後村木の尾行だとしても一緒に居られるもんね…と一人いじいじ。
定時の18時を迎えて、社員の半分は帰宅の路に着く。半分は残業で、それも一時間もすりゃその半分に減って、更に一時間が経つとその半分と言う具合に減っていくわけだが。
今日は公言した通り俺の部は定時になると、早々と帰り支度。立ちながら鞄の中身を確認するフリでさりげなく隣のブースを見たが村木はまだ行動を起こす気配を見せない。
ちっ
これだったら会社の裏で待ち伏せする方がいいな。と考え、さりげなさを装って瑠華に目配せすると瑠華も佐々木に気づかれないように小さく頷き、同じように片づけをしている。
俺は早々に片付けを終え、瑠華と佐々木を残し
「じゃ。お先~」と軽い口調で一人先にブースを抜けた。
これも計算済みだ。佐々木が帰った後、瑠華は一人で残り村木の監視。俺は先に会社の従業員ゲートが見える角で、ヤツが出てこないか見張り。村木が帰る素振りを見せたとき、瑠華が俺にメールをくれる段取りになっている。



