「僕……それこそ今のあなたぐらいの年齢のとき、一人の女性と付き合ってました。僕はその人のことを凄く好きで、ずっと一緒に居たいと思って、付き合いは一年程だったんですが本気で結婚を考えました。
彼女も同じ気持ちで居てくれてるか、と。で、相談を持ち掛けて……」
「フられた?」
俺が先を促すと、菅井さんはゆるゆると首を横に振って、
「フられた、だけならどれだけ楽だったか、そのときはじめて打ち明かされたのですが、彼女結婚していて、ご主人も居たんです」
「へ……!」
ヘビーだな!!
「後々から考えて変だな、と言う所があったんですが、そのときは気持ちの方が大きくて、彼女の言葉を信じていた。いや、信じたかった……
フリーで通訳の仕事をしている、と言うことで昼夜構わず仕事が入るので急に会えなくなったり、夜のデートがなかなかできなかったり、と。
実際、通訳の仕事はしていたらしいのですが、それも結婚前までの話らしく」
菅井さんが不倫!?意外過ぎる事実に俺は言葉も出ず……まぁ菅井さんは、言い方は悪いが騙されてたってわけだし、彼に全く否がないが。
「―――知りたくなかった。
別れのときも、普通に『僕とは結婚を考えられない』と、ただ、そう言ってほしかった」
だからか……だから、俺にも真咲との関係を知りたくない。と言ったのは。
あのときの菅井さんは底知れぬ苦しみを抱えていたように思えた。その根本がそこにあったのだ。
「もう二度と真剣になりたくない、と思ってしばらくフリーだったんですが
真咲と出会って、また性懲りもなく
彼女のことを好きになってしまった」
菅井さんは両手で顔を覆った。



