そして、 「あの、山口さん。大丈夫」 ですか?、と徳佐は言いたかったに違いない。 違いない、というのは 言えなかったのだ。 それからは一瞬だった。 ぱちくり、と瞬きをすればそこにいたはずの山口さんは、 「っ」 黒の残像と化していたのだから。 思わず、徳佐も出かかった言葉を飲み込む。 もはやあれは人間の速さではない。まさに風のように。 ーーー最後に見えたような気がするのは、山口さんの悲しい顔。 「どういう、こと......?」