ユウ君の説明はこうだった。


大学の帰り道、レンもユウ君も自転車でいつもの道を並んで走っていた。

あの川沿いの道を過ぎて、

ユウ君はアパートに、レンはバイト先に、

分かれ道の赤信号の横断歩道に差し掛かったときだったらしい。


横断歩道の手前で自転車を止めようとしたとき、

ユウ君の目の前に小学生の男の子が飛び出してきた。


急に飛び出してきた男の子を避け切れなかったユウ君の自転車は、その子のランドセルにぶつかった。


はずみで赤信号の横断歩道に押し出された男の子は、

膝を抱えたまま泣き出し、動けずにいたらしい。

慌てて自転車を降り、男の子に駆け寄ったユウ君。


「危ない! 早く戻れ!」


信号待ちをしていた誰かが叫んだ。

急ブレーキの音を響かせながら、自動車がふたりに迫っていた。


ユウ君はその自動車を視界に捉えながら、男の子をぎゅっと抱えたまま動けなかった。