和夫さんは多江さんと初めて会ったその日に恋に落ちた。
問題は多江さんのかたわらに、兄の隆夫さんがいたこと。
その日は隆夫さんが多江さんを紹介しにきた日だった。
その日から和夫さんの苦しみは始まった。
「弟の僕が言うのもなんだが、兄はいい人だった。尊敬もしていた」
それがなおさら和夫さんの苦しみを増した。
愛した人に恋人が。
しかしその恋人を憎むこともできない。
不慮の事故で隆夫さんがこの世を去ってからも、それは同じだった。
多江さんが毎日、隆夫さんのことを想い、自分の殻に閉じこもってしまったからだ。
「僕にはもう、勝ち目はなくなった」
勝ち目?
「あの、それどういう意味ですか」
「考えてみてくれ。兄さんはもうこの世にはいない。多江さんの中で、ずっと変わらずに生きてゆくんだ」
例えていうなら、理想が真空パックされてるってことか。
「多江さんは毎日、兄の姿を求め、自分の殻に閉じこもり続けた」
問題は多江さんのかたわらに、兄の隆夫さんがいたこと。
その日は隆夫さんが多江さんを紹介しにきた日だった。
その日から和夫さんの苦しみは始まった。
「弟の僕が言うのもなんだが、兄はいい人だった。尊敬もしていた」
それがなおさら和夫さんの苦しみを増した。
愛した人に恋人が。
しかしその恋人を憎むこともできない。
不慮の事故で隆夫さんがこの世を去ってからも、それは同じだった。
多江さんが毎日、隆夫さんのことを想い、自分の殻に閉じこもってしまったからだ。
「僕にはもう、勝ち目はなくなった」
勝ち目?
「あの、それどういう意味ですか」
「考えてみてくれ。兄さんはもうこの世にはいない。多江さんの中で、ずっと変わらずに生きてゆくんだ」
例えていうなら、理想が真空パックされてるってことか。
「多江さんは毎日、兄の姿を求め、自分の殻に閉じこもり続けた」


