多江さんは言った。
「新歓の席で一度、口にしただけですよ」
その一言を覚えてるのは確かに変だ。
むしろあやしい。
さては達郎兄ちゃん、多江さんに気があるのか(もしくはあったのか)と邪推してみる。
「知り合った相手の顔と名前、特徴を覚えるのは、欧米では常識です」
達郎兄ちゃんは事も無げに言った。
「だからクリスティーの【そして誰もいなくなった】という傑作が成立したんですよ」
達郎兄ちゃんには海外留学の経験がある。
多江さんの事を覚えてたのは、そこで身につけた習慣からだったようだ。
なんだ、面白くない。
なんか勘ぐって損したって感じ。
その時、小さなメロディが鳴った。
多江さんの携帯だった。
「隆夫さんからだわ」
携帯を見て、多江さんが言った。
「返信が遅いので焦れたんですかね」
達郎兄ちゃんが訊くと、多江さんは首を振った。
「ここに来る途中で、返信はしておいたんです」
「新歓の席で一度、口にしただけですよ」
その一言を覚えてるのは確かに変だ。
むしろあやしい。
さては達郎兄ちゃん、多江さんに気があるのか(もしくはあったのか)と邪推してみる。
「知り合った相手の顔と名前、特徴を覚えるのは、欧米では常識です」
達郎兄ちゃんは事も無げに言った。
「だからクリスティーの【そして誰もいなくなった】という傑作が成立したんですよ」
達郎兄ちゃんには海外留学の経験がある。
多江さんの事を覚えてたのは、そこで身につけた習慣からだったようだ。
なんだ、面白くない。
なんか勘ぐって損したって感じ。
その時、小さなメロディが鳴った。
多江さんの携帯だった。
「隆夫さんからだわ」
携帯を見て、多江さんが言った。
「返信が遅いので焦れたんですかね」
達郎兄ちゃんが訊くと、多江さんは首を振った。
「ここに来る途中で、返信はしておいたんです」


