月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側

あたしは一気にまくし立てた。

「あたしはそういう理由で入院したんですけど、貴女は何で入院してるんですかっ!?」

相手のプライバシー完全に無視。

最悪な質問だねウン。

言った後でつくづくそう思ったよ。

テンパってたとは言え、なんつー事を口走ってしまったんだあたしは。

「猫を助けたんですか」

へ?

「それで怪我をしたなんて、何だか恰好良いですね」

あら、意外と好反応。

美女の笑顔に、あたしは拍子抜けした。

「あの、あたし旭果穂里っていいます」

いくらか冷静になったあたしは、両手に握り締めていた松葉杖を元に戻し、今さらながら自己紹介した。

「雪村多江です」

多江さんかー。

「旭さんは学生?」

そう訊かれ、あたしはうなずいた。

「高校生です」

「入院は初めてなの?」

「はい」

「病気とかは?」

「滅多にないですねー」

「じゃあ仕方ないわね」

多江さんは、少しだけ眉を寄せて笑った。