達郎兄ちゃんがあたしに視線を向ける。

あたしはうなずいた。

『あたしも、このままじゃいけないよね』

多江さんは確かにそう言った。

「多江さんの病気が治る事によって、婦長には不都合が生じたんだろう」

「不都合って何よ」

「それを調べるのがレミの仕事だ」

麗美姉ちゃんは下唇を尖らせたが、達郎兄ちゃんは無視して話を続ける。

「その不都合があったから、婦長は…いや、婦長と藤上医師は、昨夜に多江さんを殺害したんだ」

そして、と達郎兄ちゃんは付け加える。

「携帯メールを利用して多江さんの自殺を偽装したんだ」

「和夫さんの自殺未遂も好都合だったんだね」

「そうだな」

「メールの遺書は誰が送ったのよ」

「婦長が多江さんの携帯を使って、自分の携帯に送ったんだろう」

麗美姉ちゃんの問いに答えながら、達郎兄ちゃんはファイルを開く。

「だから字を間違えたんだろう。婦長にとっての【おば】は経営者である【伯母】だけだからな」