声にならなくなった和夫さんの告白に、婦長さんが補足をする。
カチ。
カチカチ。
歯が震えて音をたてはじめた。
やがて震えは全身に移った。
『多江さんは目の前にいる』
『最初から負けた気でいるのは駄目』
どちらも以前、あたしが和夫さんに対して言った言葉だ。
和夫さんが多江さんに真実を告げたのは多江さんの死の前日。
ということはあたしと喫茶室で話した日。
和夫さんはあたしと喫茶室で話した後、多江さんに真実を告げたのだ。
帰るなんて言っておきながら、そのまま多江さんのもとへ向かったのだ。
たぶんあたしの言葉に背中を押されて。
だとしたら…。
「カホ、病室に戻ろう」
震えるあたしの肩に、達郎兄ちゃんがそっと手をそえた。
前を見れば、むせび泣く和夫さんに、婦長さんが必死に言葉を投げかけている。
叱咤とも、なぐさめともとれる言葉を。
確かにあたしたちがいてもしょうがないね。
カチ。
カチカチ。
歯が震えて音をたてはじめた。
やがて震えは全身に移った。
『多江さんは目の前にいる』
『最初から負けた気でいるのは駄目』
どちらも以前、あたしが和夫さんに対して言った言葉だ。
和夫さんが多江さんに真実を告げたのは多江さんの死の前日。
ということはあたしと喫茶室で話した日。
和夫さんはあたしと喫茶室で話した後、多江さんに真実を告げたのだ。
帰るなんて言っておきながら、そのまま多江さんのもとへ向かったのだ。
たぶんあたしの言葉に背中を押されて。
だとしたら…。
「カホ、病室に戻ろう」
震えるあたしの肩に、達郎兄ちゃんがそっと手をそえた。
前を見れば、むせび泣く和夫さんに、婦長さんが必死に言葉を投げかけている。
叱咤とも、なぐさめともとれる言葉を。
確かにあたしたちがいてもしょうがないね。


