「あ」
あたしはあることに気付いた。
「携帯、部屋に忘れた」
「どうせ持ってても使えないだろ」
「気分の問題よ」
あたしは達郎兄ちゃんに向かって手を合わせた。
「お願い達郎兄ちゃん、一回戻って」
達郎兄ちゃんは素直に車椅子を押してくれた。
あたしの病室がある五階につき、廊下を進んでいると、あたしの視界に見慣れた人影が入った。
「あ、和夫さんだ」
「和夫さんて、多江さんの恋人の?」
「弟で、多江さんのことが好きな…」
和夫さんはあたしたちに気付いた風もなく、うつむいたまま階段を登っていった。
「なんで病院(ここ)にいるんだろ」
もう多江さんはいないのに。
「てかカホ」
「なに?」
「ここ、五階だよな」
「当たり前でしょ」
「上はもう屋上しかないよな」
「うん」
「ずいぶん思い詰めた顔してなかったか」
「…!」
あたしは達郎兄ちゃんが言おうとしていることを理解した。
あたしはあることに気付いた。
「携帯、部屋に忘れた」
「どうせ持ってても使えないだろ」
「気分の問題よ」
あたしは達郎兄ちゃんに向かって手を合わせた。
「お願い達郎兄ちゃん、一回戻って」
達郎兄ちゃんは素直に車椅子を押してくれた。
あたしの病室がある五階につき、廊下を進んでいると、あたしの視界に見慣れた人影が入った。
「あ、和夫さんだ」
「和夫さんて、多江さんの恋人の?」
「弟で、多江さんのことが好きな…」
和夫さんはあたしたちに気付いた風もなく、うつむいたまま階段を登っていった。
「なんで病院(ここ)にいるんだろ」
もう多江さんはいないのに。
「てかカホ」
「なに?」
「ここ、五階だよな」
「当たり前でしょ」
「上はもう屋上しかないよな」
「うん」
「ずいぶん思い詰めた顔してなかったか」
「…!」
あたしは達郎兄ちゃんが言おうとしていることを理解した。


