月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側

捜査状況は麗美姉ちゃんから聞いているだろう。

確認作業だったのかもしれない。

「ありがとうございました」

達郎兄ちゃんは携帯を婦長さんに返した。

そしてそのまま立ち上がる。

そこで達郎兄ちゃんの動きが止まった。

「?」

あたしが顔をのぞき込むと、達郎兄ちゃんはある一点に目をとめていた。

それは婦長さんの机の上だった。

そこには1冊の本。

「面白そうな本を読んでいますね」

達郎兄ちゃんは笑顔で言った。

「ちょっと見せてもらっていいですか」

婦長さんの返事を待たずに、本を手に取る達郎兄ちゃん。

本のタイトルは【投資家のための企業選び】。

「今度大学で経済のレポートの提出があるんです。参考に借りていいですか」

なんで文学科の達郎兄ちゃんが、経済のレポート書くんだろ?

てか達郎兄ちゃん投資とかに興味ある人だっけ?

おまけにずいぶん強引な借り方だし。