「昨日ナースステーションにはどなたが?」

「当直の看護師は、鈴木さんと高森さんでした」

「医師(せんせい)は?」

「昨日は藤上先生です」

3分の2が聞いた名前だった。

「多江さんはすぐに見つかったんですか」

婦長さんは首を振った。

「ひょっとしたら外に出たかもしれないと思って、病院の周辺を探してみることにしたんです」

婦長さんは高森さんを連れて外に出た。

病院内の捜索は藤上先生ともう一人に任せた。

「病院の周囲をぐるっと回ってみたんですが…」

多江さんの姿は見つからず、婦長さんはふと屋上を見上げてみた。

するとそこに人影が見えた。

しかもその屋上の人影は、柵を乗り越えた場所に立っていた。

「私は高森さんに声をかけて、慌てて病院内に戻りました」

「人影が多江さんだと思ったんですね」

「はい」

しかし病院内に戻ったその時ドカンという、大きな音がした。

何かが落ちた音だと思うのに、時間はかからなかった。