ですからお願いしますと、達郎兄ちゃんは再び頭を下げた。

「お願いします」

あたしも達郎兄ちゃんにならって頭を下げる。

「そこまで言うなら…」

婦長さんはナースステーションの様子をうかがうと、いくらか声のトーンを落として話はじめた。

婦長さんが事件に「気付いた」のは、勤務を終えて自宅マンションに帰った時だった。

時刻は午後8時過ぎ。

「近所のスーパーで夕飯の買い物をして帰ったんです」

ちなみに婦長さんは一人暮らしだそうだ。

「玄関に荷物を置いた時、携帯が鳴りました」

携帯を見ると、メールが着信していた。

送り主は多江さん。

「メールの内容は自殺をほのめかすものでした」

自殺…。

認めたくないフレーズが胸に突き刺さる。

「メールを見て、すぐに病院に戻りました」

多江さんの病室に行ってみたが、そこには多江さんの姿はなかった。

そこで婦長さんはナースステーションに行き、多江さん捜索の手伝いを頼んだ。