彼女は黙ってうつ向いてしまった。 「半沢さん、それ、返してください」 あたしが2人の前に出て行くと、2人は驚いた表情を見せた。 ……お願い返して。 「大切なものなんです」 「…っ……」 半沢さんの目が、心なしか潤んで見える。 泣きそうな感じ。 「……ずるい…っ」 ずるい? 「石田さんばかり…っ。わたしだって先輩が好きなのに…!」 そう言うと「こんなもの!」とウォークマンを投げつけて走って行ってしまった。