【ほのB】リトル・プリンス

 噛みつく僕に、トシキは、ニヤリと笑う。

「……そう、怒るなよ。
 オレは、ただ。
『雪の王子』の『椿姫』に『このオレサマが直々に』が曲をつけてやるから、ヒマなヤツは見に来い、ってちょっと、誘っただけだせ?」

「……てめぇ!
 ナニが『ちょっと』誘っただけだ!
 そんなんで、こんなヤバそうな、面倒なヤツらばっかり山ほど呼びやがって!
 あんた、一体、ドコの国の王子だって言うんだよ!」

 口の中で唸る僕に、今度も殴られるのは、真っ平だと。

 十分に僕から離れ、間合いを取ったトシキが、手をひらひらと振った。

「さあな~~
 身内に、自分の舞台を見ろ、はフツーだろ?
 お前だって、今日、ここに呼ばなかったのか?
 ……例えば、あのガキじゃない。
 本命の駆け落ち男、とか?」

 そんなトシキの言葉に、僕はぎくり、と反応する。

「……ハニーに何かしてみろ。
 殺してやるから……!」

 嫌な予感に、僕は本気だ、と瞳に力を込めれば。

 トシキは、へらへらと笑った。

「……っていうか、お前。
 男と裏の世界から逃げて、何年だよ?
 なのに、未だに『ハニー』だって?
 莫迦莫迦しくて笑えるぜ?
 恋愛ごっこも、そろそろ飽きてこないか?」

「トシキ!」

 今、できる最大の声の大きさで、囁けば。

 トシキは、肩をすくめて言った。

「オレは何もしねぇし。
 お前が、ちゃんとオレの顔を立てれば。
 客席のちょっと短気なヤツらも、大人しく帰るはずだ」

「つまり、ハニーにケガをさせたくなかったら、真面目に『椿姫』を踊れと?」

 睨む僕に、トシキが笑う。

「ふふん、話が早くて助かるぜ?
 雪の王子との共演が楽しみで、楽しみで。
 思わず、ぽろっとツイッターで囁いてみたら、楽屋に花まで届きやんの。
 しかも身内からだけじゃなく、別口からも~~」

 いや、お互い、アマチュアのクセにファンが多くて、何よりだな~~と。

 軽薄に笑うトシキに、僕は、キレそうになった。