「……やだ。
 螢ちゃん、凄い汗!
 本当に、風邪を引いちゃったみたいね?」

 僕の気持ちを知らずに来るシェリーに、僕は、我ながら、弱々しいな、と思える声を出した。

「風邪じゃない。
 ……シェリーは、それ以上、近寄るな」

「なんでよ?」

 訳が判らない、と。

 クビを傾げる感じが、ハニーにそっくりで。

 僕は、狼みたいに喉の奥で、ぐるるる、と唸った。



 ……そりゃあ、あんたが。

 この世で最も、僕の好みに近い顔立ちをしてるからだ!

 くそったれ!

 しかも。

 直斗みたいな、小さな男の子じゃない。

 ちゃんと育った、オトナの。

 僕より少し年上の女性は。

 ハニーに、出会う前の、本来の僕のストライク・ゾーンだったんだ!。

 この状態で。

 世界一好きなヤツの妹相手に、自分の理性がどれだけもつのかの実験なんて。

 絶対にしたくなかった。

 僕は、さっさと帰れと、シェリーに言ったはずなのに。

 シェリーは、様子が変で、心配だから、と、ますます近づいて来る。



 ち……っくしょ!



 これで、僕が、思わず。

 シェリーを、ぱくっと喰ってしまったら。

 誰が、ど~~責任を取ってくれるんだ!

 トシキの莫迦たれ!!

 小生意気な直斗は、チビのクセに、すぐ人の世話を焼きたがるが、その母のシェリーは、もっと、お節介だ。

 納得しないままでは、絶対帰らないどころか。

 却って、とっとと、僕の服を脱がしかねない勢いに、僕は、もう一度うなった。

「帰れよ!」

「嫌よ!」

 いかにも、異国の血が混じっているらしい。

 女にしては、かなり背の高いシェリーが。

 僕を壁に追い詰めると、背伸びをして、僕に視線を合わせた。

「ね? 螢ちゃん。
 あたしにまで、意地を張るのは止めてって、いつも言ってるでしょう?」



 ……家族なんだから。