「ふざけ……!」

 僕の声を、手で塞ぎ、トシキは、耳元で荒い吐息をついた。

「もし、誰かに見つかって、お前がここに居られなくなったら、オレん所に来ればいい。
 お前が今、どんな暮らしをしてるのかなんて知らねぇが。
 オレは、お前と駆け落ちした男よりも、絶対金持ちだ。
 暴力沙汰を嫌って『組』を辞めたんなら、別に働かなくてもいい。
 今の男を振って、オレのモノになるというのなら。
 結花も入れてねぇ、オレの屋敷の奥や別荘で、お姫様みたいに贅沢三昧をさせてやるぜ?」

「~~!!!」

 僕の、全身を使って叫んだ拒否、を示す言葉は。

 トシキの手から、いつの間にか変わった唇で完全にふさがれて『声』にならなかった。



 僕は、トシキにキスをされ……た……んだ。


 かなり強引に入って来る舌に、完全に声を奪われ。

 呆然とした僕の隙をつき。

 トシキは、くちづけを続けたまま。

 僕の両手をひとまとめに抑え込み。

 残った手で、ズボンを下げようと僕の腰に手をかけた。



 ……その時だった。


 僕たちの居る更衣室の真横のスタジオで、とんでもない騒ぎか起きたのは。