僕に、同性の伴侶がいることを、職場の同僚の結花は知っているし。

 里佳も結花から聞いて、知っているはずで。

 僕達の関係は、ただのフラメンコ仲間。

 友人の域を出ないはずだった。

 付き合い方だって。

 隣近所にいる、他のお姉さま方と変わらず、元気に僕をいじくっては、笑うだけで。

 色っぽい話は、カケラも出ない。

 ……言っておくけど、僕は。

 昔やってた怪しい水商売で、女性客を相手にしてたんだ。

 僕が、恋愛ごとに鈍感なワケじゃないぞ!

 どちらか、と言うと。

 里佳よりも僕の踊りに、鼻の下を、びろ~~んと伸ばした、トシキ自身の方が怪しい。

 多分。

 怪訝な顔になっているだろう僕に。

 トシキは、肩をすくめると言った。

「好きなヤツが何考えてるかぐらい判る」

「……は?」

 あまりに、さらり、と言ったその言葉に、僕の目が点になる。

 僕が黙ったのを、どう思ったのか。

 トシキは、嬉しそうに言葉を続けた。

「里佳は気に入ったヤツの前でだけ、かなり強気に、陽気にモノを言うんだ。
 普段、真面目で控えめな、あんまりおもしろくない女だけど。
 好きな男の前で委縮して、何もしゃべれなくなる普通の女とは逆なところが楽しいし。
 それに何より、あの。
 ぼいんぼいんのメリハリのあるカラダがイイ」

 確かに、里佳の事をつまらない女、だなんて想ったためしは無いけれど。

「好き、だって?
 カラダがイイだって?
 何を言ってるんだ?
 あんたのパートナーは結花の方だろう?」

 子どもまでいるくせに、ナニか莫迦なコトを言ってるトシキは、ちっちっち、と指を振った。

「世界中の女はオレのもんだ。
 だから、食える機会があるなら、誰でも遠慮なく、食う」

「外道」

 呆れて、僕がため息をつけば。

 トシキは、口をとがらせた。

「なんだよ~~
 口に出して言うかどうか。
 本当に実行するかどうかは、ともかく。
 世の中の野郎どもなんて、皆考えることは一緒だろ?
 お前も、ホストまがいの水商売をやってたんだったらさ。
 結局……同じじゃないか?」