今から20年前の8月27日。

アメリカ合衆国の地を踏みました。

渡米初日に宿泊した宿は、学生寮の一室でした。

本来二人部屋なのですが、その時はたまたま私一人でした。

到着が遅れたため、その日はすぐに休むことにしました。

ベッドに横になると、いつのまにか眠ってしまいました。

時刻は覚えておりませんが、夜中に体が動かなくなりました。

瞼は開かないけれども、部屋の様子がハッキリと分かりました。

扉の下の隙間からは、廊下の明かりが漏れています。

なんとかして体を起こしたいと思いましたが、自由が効きませんでした。

そして…

扉の下の隙間から人影が見えました。

その時漸く、恐怖が沸き起こって来たのです。

早く起きなければ!

扉がゆっくりと開いていきます。

忍び寄る影。

瞼を閉じたままなのに、すべてが見えました。

人影はそのままベッドの上に乗り、私の上に跨ったのです。

腹にズシリと体重が掛かり、ベッドに沈み込んでいきます。

声を発することもできません。

私はバンザイをする恰好で両腕を抑えつけられます。

もがき苦しみながら、腰を横に捻りました。

すると…

のしかかっていた人影が消えてしまいました。

部屋は真っ暗なまま、扉もしまっています。

体にはしっかりとあの重みが残っていました。

それ以来、その部屋で奇妙なことは起こりませんでしたが、今でも私の体には痕跡が残っています。