この仮想現実の世界で私は思う。




現実では必要ない私でも、ここでなら必要とされてるんだと…。




じゃあ私の存在意義は現実ではなく、こちらにあるのではないか?




そんな風にさえ思ってしまうのは、やはり病んでいるからなのかもしれない。




ただ過ぎていく日常より、この世界はとても色鮮やかで魅力的だった。




静かな森の中で私は足を止め、空を見上げた。




木々の間から見えた青に目を細め、少しドキドキしている自分に気付いて恥ずかしくなった。




これから起こるだろう出来事にワクワクしてたり、年甲斐もなく胸を踊らせている私。




シンが言うには危険が伴うらしいが、所詮ただのゲームだし心配ないだろう。




「で、とりあえず私は何処に向かえばいい?」




「まずは情報収集だね。近くに大きな都市があるから、まずはそこに行ってみたら?」




私は荷物から地図を取り出すと場所を確認した。




「北に4~5kmってとこかしら…」




「地図だとそうなんだけど、北は山を越える事になるから危険だよ?」




「そうなの?…じゃあ、東側から迂回した方が無難ね…。」




肩に腰を下ろして一緒に地図を覗き込んでいたシンも私の言葉に頷いた。