「…それは、この薬の効果かしら?それが私をそんな気持ちに駆り立てさせて…」

「そんなはずは、ありません!」

「!!?」



…省吾がそう叫んでから、五分ほど過ぎたであろうか。何とも言えない、心地の良くない静寂が二人っきりの空間に居座っていた。

そして、その静寂を打ち破るかの様に、省吾がまた語り始めた。

「…そんなはずは、ありません。薬の影響で、僕に対してキスをしたくなったと言う所までは解りますが、だからと言って、中和剤を飲まない、飲みたくはないというのは、おかしいと思います。」

「だから、何故!渚君や沙織さんだって飲まないと言って…」

「今の由美子さんの場合、感染した他の人達と明らかに違う所があるからです。」

「えっ!?」

「…もう、自分自身の気持ちを伝える事においての障害が、一つも無い。
もう僕は、由美子さんの僕に対しての気持ちを知ってしまっているのですから。

…告白する為の勇気を、由美子さんは必要としていないのですから!」