着物に雨が染み込んで、重い。 楓の武器は、速さ。 それを封じられれば 「…っ、く、ぅ…!」 楓の脇腹に、男の刀が食い込む。 楓は痛みに呻く。 ――速さを無くせば負け。 当たり前、なのだ。 楓は武術の基礎を、戦い方の基礎を知らない。 身軽さと速さで勝ってきたが、それを、体力の無さで、雨で奪われた。 「……っ。」 楓は地面にうつ伏せに倒れこむ。 血が、雨と流れていくのが感覚で分かった。