魔女と呼ばれた娘



今目の前にいる男は、明らかにレックスとは違う。
姿も、記憶も、レックスと同じはず。

だが、何かが決定的に違う。
何かが、レックスという存在を成り立たせた何かが抜け落ちていた。


それがないから、彼は自らの前世に怯えている。
前世を受け入れることもできず、震えている。


シスターはただそれを見ていた。


王エリックは、大陸を統治した後、自らの命を絶った。
それが彼の贖いだとすれば、


レックスの贖いは、こうして震える事なのだろう。
こうして、過去を恐れ、未来を恐れ、自分自身の前世に怯えることなのだろう。



救いもなく、終わりもない。

あまりにも無慈悲で、残酷な贖罪。



「どうして……俺の前世はレックスなんだ……っ」

彼は震えている。
泣いている。


今この世に生まれてきたこの男は、前世の記憶を持って生まれてきてしまった。
そして、前世の自分を形作る大事な物を失った状態。

前世にとらわれ、現世の自分の命を見つめられない。
未来も、過去も、現在も、彼は奪われてしまった。


すべては前世の償い。
それは、これからも一生終わらない。


「あなたの……名前は……?」


「……シェリル」



彼はもう、シェリルとして生きる事は、許されない。

レックスを形作る大事な何かを取り戻さない限り、



この贖罪は、終わらない___。