「俺は確かに死んだ」
教会の中で、男は前世をシスターに語る。
強く自らの体を抱く。その肩は震えていた。
「だけど、俺は生まれ変わってしまった」
「……」
目の前の男は震えていた。
過去に大罪を犯し、己の罪に震えていた。
「同じ銀髪! 同じ顔! 同じ声! 同じ体! 同じ職人として! 俺は生まれ変わった!」
叫ぶ。
それは悲鳴にも似た悲痛な叫び。
「娘が……シャーリィが生まれて、この腕であの子を抱いた瞬間、前世の記憶が頭の中に蘇った。あの恐ろしい行いのすべての記憶が、蘇った……」
頭を抱える。
男は怯えている。自らの前世に怯えている。
前世に犯した罪に震えている。
自分自身の前世に、怖れを抱いている。
「俺は、この世で、誰ひとり殺していない! なのに、俺にはこの手が血で真っ赤に染まっているように見える! ……恐い」
この時代に生まれてから彼は、人を殺さず、誠実に生きてきた。
しかし、前世の血染めの記憶が、彼を苦しめている。
「いつか、俺も前世のように人を殺すのだろうか……。人を脅すのだろうか……」
そしてこれからの自分を恐れている。
今の自分も前世と同じように罪を犯す事を恐れている。
「……死んでしまいたい。だけど、死ぬのは恐い……」
恐れている。
目の前で、男は小さくうずくまり、震えている。
そこには、血濡れの執事はいない。
いるのはただ、怯えている男だけだった。



