魔女と呼ばれた娘


「残念だったな。彼女に愛されているとか、そんな夢でも見てたんだろう?」

「だ、だが……なぜフランチェスカは俺ではなく彼女を殺したんだ」

戦争を起こすきっかけを作るのが目的であったなら、それは果たされた。
それなのになぜ、戦争ではなく、隣国を滅ぼすという行動に出たのか。

「それは、お前がフランチェスカを……あの子を傷つけたからだ。他の女に騙されて、愛しあっていると勘違いして、お前があの事の婚約を切ったからだ」

「だが、それならば俺を殺せばよかっただろう!」

声が裏返っている。
焦っている。動揺している。それが目に見えて分かった。


「お前が不用意に恋人がいる事を婚約破棄の理由にしたからだろ? 当然、女の嫉妬でマリアに憎しみは向かうだろ」

「俺の、せいだと……?」

力のない目でレックスを睨みつける。
睨みつけているその瞳は震えている。


「ああ。あの時お前が恋人なんかを持ち出すからだ。理由なんか適当にはぐらかしとけばいいものを」

それがフランチェスカを深く傷つけ、彼女に嫉妬と憎しみを抱かせた。
フランチェスカにマリアを殺させたのは、他でもないエリックの軽率な行動なのだ。

勿論、これは自分勝手のいい分に過ぎない。
それでも、フランチェスカはマリアを殺した。

だが、そんなことを言い返せるような気力はエリックにはない。
自分の行動が愛する彼女を殺させた。
その言葉が深く、彼の胸をえぐり、大きなダメージを負わせた。
深い罪悪感と自己嫌悪がのしかかる。


「お前が、マリアを殺させたんだ」

「違う……違う……俺のせいじゃない、俺のせいなんかじゃ……」


まだ若いエリックの精神を、少しずつレックスは壊していく。
少しずつ、確実に、彼に傷を負わせていく。
そこで、とどめを刺した。


「ありがとうな」

「……えっ?」

「お前のおかげで、この国を潰せた。
 お前があの子にマリアを殺させることで、この国は滅んだ。
 ありがとう」


エリックのおかげで、この国を滅ぼせた。
それを、レックスが口にした。


自分のしたことが、結果的にマリアを死なせた。
そのことで憎んでいる相手から礼を言われた。

それがひどく悔しく、エリックの中に自己嫌悪を抱かせた。