レックスが女王として捕まった時。
エリックは彼女――正確には彼――を訪ねた。
「話がある」
「あら、エリック様」
鉄格子ごしの会話。
女王は牢屋の奥で笑っている。
その様子がエリックにとっては腹立たしかった。
看守を退室させ、鉄格子越しに彼女の襟首をつかんだ。
「どうして彼女を殺したんだッ!」
強く怒鳴りつける。
目の前の女王は愛するマリアを殺した。その憎しみに目はぎらついている。
その様子を、女王は嘲笑った。
「何がおかしい……ッ!」
「いや、あまりにも滑稽でしたので……」
ケラケラとフランチェスカは笑っている。
その様子を、エリックは不思議に見ていた。
婚約者としてそばにいた時と、全然別人のような様子に驚いていた。
だが、そこから先を考えるほど、その時のエリックは冷静ではなかった。
「ご存じなくても仕方ありませんが、ここまで何も知らないと、哀れにも思えますね」
「なにがおかしい! 何を笑っている!」
怒りにまかせて怒鳴り散らすエリック。
クスリとまた笑い、フランチェスカはその手を握る。
そして、強い男の手で引き剥がした。
「だからお前はガキなんだ」
「っ」
強い声。本来のレックスの声。
エリックの前で、正体を晒した。