「……その話、誰に聞いた?」
シスターに歩み寄り、顔を寄せる。
ゴーグル越しにきつくその顔を睨みつけた。
「……父と母です」
平然と答えるシスター。
近くで見ても、その顔のすべては見えないが、どこか懐かしさを感じた。
「……その話は、この国の歴史を調べても一つも出てこない」
「当時の王が、レックスの行いを無かった事にしたんですよ」
にこりとシスターは笑う。
だが、父親は表情を変えない。
「どうしてアンタがその話を知ってるのか聞いてんだ。アンタは……」
「……ノワール王国女王、フランチェスカの子孫と、私は聞いています」
その言葉に、父親は息をのんだ。
そして、近くの椅子に座り、大きく息を吐きだした。
「……そうか」
安堵が込められた声。
父親は帽子とゴーグルをとった。
帽子の下から現れたのは、夜空に映える星の様な白銀の髪、
ゴーグルの下には、色気をふくんだ紫の瞳。
いずれもレックスの容姿を象徴する物だ。
シスターの家で伝え聞いたレックスの容姿と全く同じ姿がそこにあった。
「あなたは、やはり……」
声をかけるシスター。
ここでようやく懐かしさの意味が分かった。
「レックスは俺の、前世だ」