そこには自分がいた。
自分とまったく同じ顔の彼が立っていた。
「顔をいじりに行ってたんです。ついでに野暮用も少々」
「私の……声……」
自分とまったく同じ声を出して、彼は笑った。
彼は城で一人にさせたことを謝り、そして事情を話してくれた。
彼は城を出たのは顔を変えるためと、
自分を死んだと見せかけるための死体を作るため、
それと、寝返った家臣を殺すためだった。
また、彼の血は真っ赤に染まってしまった。
だが彼はそのことを気にせず笑う。
「そっくりでしょ」
「……」
「俺の最期の仕事なんですよ。これは」
「最期……?」
彼はナイフを取り出し、フランチェスカの髪を切り落とした。
パラパラと落ちる彼女の黒髪。
「こうすれば全く同じ、でしょ?」
彼の美しい白銀の髪は彼女と同じ黒髪に染められていた。
「女王は罪を犯した。その罪を償わなくてはならない。女王は死ななくてはならない」
「レックス、何を言って……」
「女王を死なせるのが俺の最期の仕事です。……わかりますか?」
やさしく、彼が話しかける。
彼の言葉にどんな意味が含まれているか知っている。
そのために彼は、顔を変えた。
彼は彼女に町娘の服を渡した。
「これを着て、逃げてください。もう誰も貴方を女王と思わない」
「レックス!」
「俺は……女王としてここに残ります」
にこりと、彼は笑った。