レックスは一国を滅ぼした。
そこでようやく家臣たちもレックスの恐ろしさを知った。

「あいつは異常だ」

「これ以上女王にかかわらないほうがいい」

「逃げたほうが身のためだ」

レックスは女王の命令のためなら何でもする。
女王を守るためであれば何でもする。
それが、恐ろしい。



一方のフランチェスカはレックスの部屋に向かっていた。
部屋の奥からもの奥が聞こえてくる。


水の流れる音、小さな声。
そっと耳をすます。



「……消えない……消えない……」

かすれるような小さな声で呟いている。
そして何度も何度も手を洗っていた。


「消えろ……消えろ……」


その後ろ姿はとても悲しい。
フランチェスカはそのまま部屋を後にした。


フランチェスカは何も知らなかった。
国を滅ぼすということがどのようなものか。
だが、あの後ろ姿を見て悟った。


自分はなんてことを彼にさせたのだろう。
彼をどれほど苦しめてしまったのだろう。


そう気づいても、もう遅かった。

すでに彼の手は真っ赤に染まっている。
赤い血が彼の手を染めている。

彼は、血濡れの執事になってしまった。