「……どういう事です?」

今度はレックスが聞いた。
マリアは胸に手を当て、俯く。

「私はあの子が嫌いだった。貴方に愛されているあの子の事が……嫌いだった」

「?」

ゆっくりとマリアは歩み寄る。
そして、ナイフを持つレックスの手を握る。
血まみれの手の感触、手の震えを感じる。


「私、レックスの事が好き。……世界の誰よりもあなたの事を愛している」

「っ」

マリアからの告白。手の震えがさらに激しくなる。

「あなたはあの子に対して誰よりも優しかった。それが憎くて……同じ思いをさせようと思って引き受けた」

「……っ」

言葉が出なくなる。
しまいには、震える手からナイフが落ちた。


「どうしたの……? 私を、殺すんでしょう?」

苦笑し、マリアはナイフを拾い、またレックスに握らせる。
驚愕の目で見つめるレックスに彼女は言った。

「あなたが私を殺す事によって、私はあなたの心に生き続ける……」

「……っ」




「私を……殺して下さい」