魔女と呼ばれた娘



「これってどういう事?」

「見て分からないのならあなたの目は節穴と言わざるを得ないでしょうね」

口に笑みを浮かべるレックス。
目は笑っていない。鋭くマリアを見つめていた。

エルザと重なる。
今は亡き妻。最愛の妻。


「あなたが、お母様を……殺したの?」

恐る恐る聞く。
レックスはうなずいた。


「どうして……?」

「あなたがフランチェスカ様を傷つけたからです。婚約破棄はあなたが仕掛けたでしょう?」

「そ、それは!」

「分かっています。どうせ、ノワール国のためだとかほざく連中に頼まれたんでしょう」

レックスの声は冷たい。


「失望しましたよ。フランチェスカ様はあなたを信頼していた。実の姉のように親しかったと話していました。そんなあなたがこんなことをするなんて」

チクリチクリとレックスの言葉がマリアを突き刺す。
ぐっとマリアは唇を噛み、涙をためた目でレックスを見つめる。


「レックス、私も……殺すの?」

「ええ。命乞いをしようとも、殺します」

そう言ってナイフを抜く。
だが、その手は小刻みに震えていた。

涙をためたマリアの姿は、やはりエルザと重なってしまう。
どうして彼女は妻に似てしまったのだろう。

同じじゃなければ、こんなに、迷うこともなかった。


「……あなたに殺されるなら、それも……いいかもしれない」


そんなとき、マリアは呟いた。