ナイフの血をぬぐう。
そのまま、顔や服、髪についた血を拭うことなく部屋を出た。
返り血に濡れたレックス。
その姿を使用人は目にした。
「準備、できてます?」
「は、はい……」
恐れに染まっている表情。
それに反してレックスの表情は穏やかだった。
「じゃあ、伝えてください」
「分かりました」
使用人は駆けだす。
国を滅ぼすにはどうすればいいか。そんなものは簡単だ。
内側から壊し、反乱を起こさせればいい。
この城に入ってから数週間。
水面下でレックスは国民をそそのかしてきた。
元々この国もノワールの属国であり、国民に重税を課し、苦しめてきた。
今こそ立ち上がる時だと、国民に囁き続けた。
まず王族を殺してしまえば、この国の兵士たちは烏合の衆になり下がる。
そこを国民たちに攻め入れさせるのだ。
国民をそそのかし、反乱を思い立たせるために、いくらかの人間を殺した。
その罪を国になすりつけ、反乱の意思を育ててきた。
この国は愚かだ。
何も気づかずにレックスを迎え入れ、そして自ら苦しめてきた国民に滅ぼされる。
国民たちは王族を滅ぼし、新たな国を作ろうと息巻いている。
内乱がはじまろうとしていた。



