レックスはすぐに隣国へと渡った。
たった一人で国を滅ぼすなんて無謀だと家臣たちは笑っていた。
だが笑っていられるのも今のうち。
すぐにレックスは城へと入り込んだ。
王族、とくにマリアは喜んで彼を出迎えてくれた。
十年間この家に仕えてきたのだから気を許しきっている。
そしてしばらくの間、レックスは城にいた。
数週間後、
話があるといって国王と私室で会った。
「婚約が破棄された事は知っていますか?」
「ああ。誠に残念なことだ」
「戦争が始まるとか……」
最初のうちは、軽く世間話程度に話す。
「そのようだね。もしかして、話というのはそういうことか?」
「ええ。国王にお願いがありまして……」
にこやかに話すレックス。
ゆっくりと国王に歩み寄り、
「死んでください」
一瞬のうちに首筋を切り裂いた。
血しぶきがあがり、顔に血がかかる。王は表情を変える間もなく死んだ。
自分の血で顔も、部屋も真っ赤に染めて死んだ。
「……まず一人」
ぼそりと呟いた。



